遥か~新選組桜華伝~


不本意だけど


「美味しい……」


一口で、この料理がすごく贅沢なものだってわかる。


そして、土方さんが買ってくれたというこの着物も。


料理を食べながら、ずっとずっと考えていた。


どうしてこんなに良くしてくれるんだろうって……。


遊郭に行くことに対する罪滅ぼし?


優しさからのねぎらい?


どちらも違う気がする……。


『あははっ』


ふと、襖の向こうの部屋から笑い声が聞こえてくる。


『今日の料理も美味しいなァ』


『いつもご贔屓ありがとうございます』


女将さんと男のお客さんが話しているようだ。


一人静かに食べているせいか、隣の声がはっきりと聞こえてくる。


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