遥か~新選組桜華伝~
私はポカンと男を見つめた。
教科書に載っていそうな武士の恰好。
よく見ると、全員お揃いの羽織を着ている。
目を引く浅葱色ー…
それはお父さんに見せられた新選組のドラマで、必ずといっていいほど目にしたもの。
時代劇のような屋敷。
侍の恰好をした男達。
本物の刀………
「あの、今の時代って……?」
「あぁ?文久4年、1864年に決まってるだろ。
いつまでおかしなことを言ってるんだ!」
男が威嚇しながら怒声を上げる。
しかし私の耳には届いていなかった。
だって………
1864年って………
幕末だよ……ね……?
「うそ………」
けれど。
ついさっきまで夏だった世界に、雪が積もっている。
季節まで変わってるなんて、どう考えてもおかしい。