遥か~新選組桜華伝~
「わかった、遥のことは俺に任せろ!
永倉!早く総司を運んでくれ!」
総司を永倉に預け、急いで彼女の元へ戻った。
「遥」
「いや…っ!私……」
倒れる侍達の前で、いまだに錯乱している。
「遥!」
名前を呼んで、そして。
彼女の頭を胸に引き寄せ、抱きしめた。
「もう、何も見るな」
───全部、わかったから。
おまえが桜華石の力を使ったことも。
長州の奴らを倒したことも。
人を殺したくないと、今でも思い続けていることも……。
全部、全部わかったから───。
「おまえが無事でよかった」
ピタリと止まった彼女の瞳から、一筋の涙が流れた。
せなかをさすってやると、小さな肩が震える。
「うぅ…ひっく…」
泣けばいい。
すごく辛くて悲しい思いをしたんだろう。
その涙は、俺が受け止めてやるから。