遥か~新選組桜華伝~
ハッと起き上がると、私は屯所の自室の布団の中にいた。
「今のは、夢……?」
鼓動は速く、汗もびっしょりとかいている。
顔の前で指を動かすと、意志どおりに動いた。
何度も寝ては覚めての一夜だったが、襖から差し込む日の光から、朝を迎えたことに気づいた。
そうだ、昨日の池田屋事件で私は……。
昨日のことを思い出して、胸がキリキリと痛む。
「沖田さん……」
桜華石をぎゅっと握りしめる。
とにかく今は起きなきゃ。
沖田さんのところへ行かなきゃ……。
重い体を起こして、着替えて外に出る。
廊下を行き交う隊士達は稽古に向かう者、任務に向かう者。
昨日の勝利で活気づいたのか、みんな朝から生き生きとしていた。
けれども。
「失礼します!」
医務室に入ると、池田屋で怪我した隊士達で溢れかえっていて、医療班はバタバタと忙しい様子だった。