遥か~新選組桜華伝~


「総司は池田屋に行く途中も、ずっとはるを心配してた。
目が覚めて、はるがいなかったら大騒ぎするじゃん」


なんてため息交じりに言いながら、私を沖田さんの枕元に座らせた。


「じゃあ俺は行くから」


「えっ!ちょっと平助くん…!
まだ動いたら……!」


平助くんは手当てに使った物を集めると、襖に手を開ける。


「このくらい大丈夫だしっ!はるは心配性なんだよっ!
手当てありがとなっ!」


ニコリと微笑むのが見えて、やがて閉ざされた。


「行っちゃった……」


平助くんてば、もう通常運転だ。


でも。


そのほうがいい。平助くんの笑顔が見れてよかった。


静まり返った部屋で。


沖田さんが、コホコホと咳込むのだけが聞こえてくる。


< 209 / 276 >

この作品をシェア

pagetop