遥か~新選組桜華伝~


「沖田さん……」


手を伸ばして、そっと彼の手の甲に重ねた。


あったかい。


その温もりを感じながら、改めて思う。


あなたが無事でいてくれて良かった。


あなたを守ることができて良かった……。


沖田さんの手を両手で包み込んで、目を閉じた。


あなたが生きていてくれる。


それが何よりもうれしくて……。


一晩中悲しくて仕方なかったけれど、私……。


やっと決心がついたよ。


「私ね、本当は昨日……。
あなたが血を吐くこと、知ってたんです」


口角を上げて、なんとか笑いかける。


「助けたくて池田屋に行ったのに、結局私は動けなくて。
また守ってもらっちゃいましたね」


血を吐いて、沖田さんのほうがずっとずっと苦しかったはず。


それでも必死に守ってくれた。


昨日だけじゃない。


あなたが守り続けてくれたから、私はいつだって笑っていられたの。


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