遥か~新選組桜華伝~


涙が次から次へと零れて、手の甲を伝って布団に染みを作る。


「私は、化け物なんです……っ」


声に出さないように、嗚咽を漏らした。


あなたが目を覚ましたら、泣き顔を見られてしまう。


そしたらまた、心配かけてしまうから……。


「こんな私でも、土方さんは無事で良かったって言ってくれました。

皆さんも変わらず接してくれて、改めて新選組が大切だと思いました。

だからもう……私はここにいられません。この力で誰も傷つけたくないんです」


両手で包んだ沖田さんの手に、おでこをこつんと合わせた。


この温かい手に触れるのも最後なんだ。


そう考えるだけで、また涙が止まらなくなる。


もう決めたこと…決めたことなのに……


「沖田さん……」


離したくない。


一秒でも長く…なんて、キリがない。


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