遥か~新選組桜華伝~


ついさっきまで、僕は池田屋にいたはずなのに。


目を開けても、閉じてもそこは光も音もない世界。


どこまでも続く真っ暗な空間。


立っているのか、座っているのか、自分の体の感覚さえもない。


ふわふわと宙に浮いているようで、頭がぼんやりとする。


──"沖田さん"


どこかから、かすかに声が聞こえる。


気のせいー……?


──"沖田さん"


気のせいじゃない。


透きとおるような声。


それとともに、手のひらに感じたのは優しい温もり。


僕の手を両手で包むように握っている。


──″沖田さん″


何もない世界で……


手の温かさと、柔らかい声が僕を安心させてくれた。


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