遥か~新選組桜華伝~
姿を見なくてもわかる。
遥さん……。
あなたがいるんですね。
名前を呼んで、手を握り返して、笑いかけたいのに。
体に力が入らない。
そうしているうちに、遥さんは僕の手に、コツンとおでこを重ね合わせて言った。
「もう……私はここにいられません。この力で誰も傷つけたくないんです」
ギュッと閉じられた瞳から、涙が伝う。
泣きながら、何度も繰り返していた。
──″私は化け物だ″と。
次から次へと、僕の手を伝っていく彼女の涙。
″違う″″遥さんは化け物じゃない″
心の中で叫んでも、遥さんは悲しそうで、そして優しい笑みを浮かべている。
彼女の瞳には、僕が眠っているように映っているんだろうか?
叫んでも叫んでも、なにひとつ伝わらない。
彼女は名残惜しそうに、手を離しかけてはまた握る。
何度か繰り返して、キリがないねって笑っていた。