遥か~新選組桜華伝~
彼は懐から手ぬぐいを取り出すと、軽く傷を押さえてくれた。
「とりあえずはこれで大丈夫でしょう。でも、後でちゃんと手当てしてもらってくださいね。痕が残ったら大変ですから」
そう言ってニコリと微笑む。
穏やかな笑顔を浮かべる彼が、男達に恐れられていた彼と同一人物には見えなかった。
すごく好青年な感じ……?
ううん、その前に聞かなきゃならないことがある。
もしかしてこの人は…
「あの…」
「どうしましたか?まだ傷が痛みますか?」
「あなた、新選組の沖田総司(おきたそうじ)さんですか?」
いきなりそんなことを聞いたせいか、キョトンとされた。
「よくご存じですね。初めてお会いしたというのに…」
感心したように微笑むと
「そうです。僕の名前は沖田総司。
新選組の副長助勤を任されています」