遥か~新選組桜華伝~
沖田さんだっ!
勢いよく振り返ると、そこにいたのは沖田さんではなかった。
黒い袴を着た男の人。
年は20代半ばくらいで、黒髪の長髪に切れ長の瞳の均整な顔立ち。
沖田さんとは違うタイプ、大人っぽい色気を漂わせる美青年…
誰…?
「誰だ!!」
荒々しい声が聞こえたと同時に腕を掴まれた。
「きゃっ!」
そのまま視界がぐるんと反転する。
ドサッ
畳に背中がぶつかった。
押さえつけられた両手。
馬乗りになられる形で、私の体は押し倒されていた。
「……っ!」
すぐ目の前には男の人の顔があって。
鬼のような形相で私を睨みつけている。
「女、てめぇは何者だ。どうやってここに入った。今すぐ答えろ」
なにこれ…!
怖い…!
「…ぁ……」
男の人から伝わる殺気に、恐怖で体が氷りつく。
答えたくても、言葉すら出てこない。