遥か~新選組桜華伝~


「まぁいいか。三つ目の力は禁忌だからね」


「えっ、なぁに?」


「なんでもないよ」


ニコリと微笑むとお兄さんは石を見上げる。


大きな桜の木の下。笑ってる私とお兄さん。


別れ際。


「また会える?」と聞いた私にお兄さんは言った。


「遥が大きくなって、桜華石の力を使えるようになったとき、また会えるよ」


「ぜったい?」


「うん、絶対。なら…指切りしようか」


そう言って、お兄さんは小指を差し出してくる。


そのときのお兄さんの瞳が満開の桜よりもきれいで、私は目を離すことができなかったんだ。


それは遠い遠い日の記憶。


教えてもらった桜華石の力のこと。


お兄さんとの出会いが、後に私の運命を大きく変えること。


そのときの私はなにもわかっていなくて。


ただお兄さんにまた会えると、それだけを喜んで家路についた。

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