遥か~新選組桜華伝~
土…方…?
聞き覚えのある名前に顔を上げる。
「…別になんもしてねえよ」
ムスッと呟く男の人は、鋭い瞳に整った顔立ちをしていて……
もしかして私…この人の顔を見たことがある?
確か教科書に写真が載ってた……
「新選組副長、土方歳三(としぞう)……?」
ポツリと私が呟いた言葉を男の人は聞き逃さなかった。
「なぜ俺の名前を知っている。
遥と言ったな…?貴様まさか長州の回し者か?」
「ち、違います…」
否定してもじりじりと距離を詰め寄られる。
「じゃあ何だ?今の心臓発作もてめぇの仕業か?どうなんだ!?」
「きゃあっ!」
再び腕を強く掴まれて、思わず声を上げた。
「土方さん!やめてくださいよ!」
沖田さんに止められて
「……ちっ」
土方歳三はしぶしぶといった様子で、手を離してくれた。
「まったく…貴方って人は。
そうやってすぐ怒るから鬼の副長なんて言われるんですよ?」
沖田さんがため息をつきながら言った。