遥か~新選組桜華伝~
見えたのは金髪に袴姿の男の人。
強風を物ともせず、ゆっくりとこちらへ歩いてくる。
その人は私の正面で立ち止まると
「でも…」
怪しい笑みを浮かべ、桜華石に手を伸ばしてくる。
「…まだ力は使いこなせていないようだな」
そう言って男の人は石を強く握った。
とたんにシュゥウと収まっていく光と風。
「なっ…」
部屋は何事もなかったかのように静まり返る。
なに…これ…
立ち尽くす私の目の前。
男の人は小さくため息をつくと石から手を放した。
「貴方はいったい…」
震える声で問いかける。
「俺とお前は過去に一度出会っているのに忘れたのか?」
「え…?」
出会ってる…?
「この方は遥さんのお知り合いなのですか?」
沖田さんが尋ねてくるけど、全然思い出せない。
「私が覚えてないだけかもしれませんが…わからないです」