遥か~新選組桜華伝~
答えると、男の人は面白くなさそうに「まあいい」と言い、私の目を真っ直ぐ見つめた。
その瞳は夜の闇に美しく咲く桜のようで…
「わからないなら教えてやろう。
俺は市川遥空(いちかわ はく)。
おまえを未来から呼んだのは俺だ」
「……っ」
ドクン───!!
心臓が壊れそうなくらい激しく鳴った。
市川遥空…
聞き覚えのありすぎる名前に、言葉が出てこない。
「未来…だと…?」
土方歳三が呆然と呟く。
「大丈夫ですか?顔色が悪いですよ?」
心配してくれる沖田さんの声さえ耳に入らない。
遥空が……
私を幕末にタイムトリップさせた?
遥空は長州藩で活躍し開国を成し遂げた人であり、私達市川家の誇るべきご先祖様。
そんな人がどうして私を…?