遥か~新選組桜華伝~


答えると、男の人は面白くなさそうに「まあいい」と言い、私の目を真っ直ぐ見つめた。


その瞳は夜の闇に美しく咲く桜のようで…


「わからないなら教えてやろう。

俺は市川遥空(いちかわ はく)。

おまえを未来から呼んだのは俺だ」


「……っ」


ドクン───!!


心臓が壊れそうなくらい激しく鳴った。


市川遥空…


聞き覚えのありすぎる名前に、言葉が出てこない。


「未来…だと…?」


土方歳三が呆然と呟く。


「大丈夫ですか?顔色が悪いですよ?」


心配してくれる沖田さんの声さえ耳に入らない。


遥空が……

私を幕末にタイムトリップさせた?


遥空は長州藩で活躍し開国を成し遂げた人であり、私達市川家の誇るべきご先祖様。


そんな人がどうして私を…?


< 35 / 276 >

この作品をシェア

pagetop