遥か~新選組桜華伝~


「すまんが、トシの手当てを頼んでもいいかね?
えーっと名前は…」


「遥です」


「そうか、遥くんか。
私は近藤 勇(こんどう いさみ)。新選組の局長だ」


堂々とした笑顔で手を差し出される。


やっぱりこの人が局長…。


気性の荒い隊士に、あの鬼の副長までも従える人……


「よろしくお願いします、近藤さん」


私はその手を握ると深々と頭を下げた。


そしてすぐに手当てを始める。


ゆっくりと着物の袖を捲り上げると……


良かった…。


思ったより傷は深くないみたい…。


ホッと胸を撫で下ろした。


「では、止血しますね」


ワンピースのポケットに入っていたハンカチで傷口を押さえる。


「…っ」


土方歳三が苦痛に顔を歪めた。


「少しだけ我慢してくださいね」


そう声をかけると私は沖田さんの方を向いた。


「あの…どこかにきれいな水はありませんか?」


「あっ、僕取ってきますね」


沖田さんは小走りで部屋を出ていく。


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