遥か~新選組桜華伝~


腕を心臓より高い位置にして、血が止まるのを待つ。


まもなくして桶を持った沖田さんが戻ってきた。


水で傷口を洗い、手当てをしていく。


「ずいぶん慣れておるな。遥くんは医者なのかね?」


感心したように、近藤さんが問いかけてくる。


い、医者…!?


「私は全然そんな…!
未来で医学の勉強をちょっとしているくらいで…」


正確に言えば看護師なんだけど。


幕末には看護師という職業はないだろう。


「未来…?」


近藤さんが首を傾げながら呟いた。


ま、まずい…

つい口を滑らせちゃった…


下手に嘘ついてばれたら斬られちゃう…!


なんて答えたら…!


どうしていいかわからず、焦っていると。


ちょうどサラシを巻き終えたところ…。


土方歳三が私の前に手を出して制した。


そして足を組み直すと…


「…近藤さん、俺が説明するよ」


静かに話し始めた。


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