遥か~新選組桜華伝~


そっと目を開ける。


「いつまでもしけた面してんなよ」


土方歳三の瞳が真っ直ぐに私をとらえた。


「え…?」


どういうこと…?


「ここに残るのは嫌かもしれねえが、遥空からは俺達が守ってやる。
心配すんな」


「あ、ありがたいですけど、迷惑かけてしまいますよね…」


「迷惑じゃねえよ。遥空は幕府の敵だ。
むしろこっちから捕まえてやる」


そう言って、不敵に微笑んだ。


「ついでだ。遥空に会ったら聞き出してやるよ。
おまえが未来に帰る方法も…」


「…っ」


びっくりして、胸に手を当てたまま動けずにいると


「さっきは…手当てありがとな」


土方歳三が頭に手を置いた。


うそ…


瞳の奥に熱いものがこみ上げる。


鬼の副長って…。


私…。


本に書いてあったことばかり信じて、目の前の貴方を見ていなかったのかもしれないね。


「今日からよろしくお願いします。
…土方さん」


もう一度心をこめてお辞儀をしたんだ……。

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