遥か~新選組桜華伝~
一瞬───。
土方さんは驚いたように目を丸くしたあと…
「…テメェ。今度は何を企んでいやがる」
眉を吊り上げながら睨んできた。
「巡察中の怪我人の手当てをしたいんです。
深い傷は早めの処置が必用ですから…!」
「そんなの医療班の奴らに任せときゃいいだろ?」
土方さんは興味なさそうに言って、再び刀を拭き始める。
「医療班の方々には他の隊務があります。
朝夕の巡察全てに同行するのは難しいと聞きました」
「だからと言って…おまえが気にすることじゃない」
土方さんは刀を地と垂直に持ち、刃を睨みつけると…
「おまえは建前上は医療班所属だが、別に隊士でもなんでもねえんだから」
冷たく言い放った。
ズキン…
心が痛んで、胸を押さえたままうつむいた。
そんな遠ざけるような言い方しなくても…。