遥か~新選組桜華伝~
───・・・
突き付けた刀の先で……。
遥はどこまでも真っ直ぐな瞳で、俺を見つめていた。
「…てめぇが囮になって遥空をおびき寄せようってわけか」
「はい」
こうもきっぱりと言われるとはな…。
正直、全然予想していなかった。
剣を長いことやってきたとは言え…こいつは女子。
刀で斬られそうになったら、怖がって涙の一つでも流すかと思ってた。
それなのにこの女は……。
泣くどころか、自分の身を囮にして遥空を…あの危険な男を呼び寄せると言いやがった。
俺が刀を少し動かすだけで、テメェの命がぶっ飛ぶってのに…。
それでも…強く迷いのない視線が俺を捕らえて離さないんだ──。
馬鹿がつくほどお人よしなのか…
それとも本当にただの馬鹿なのか…
「…ふっ」
こいつの誠意に懸けてみるのも悪くはねぇ…。