遥か~新選組桜華伝~
土方さんは何も答えずに、抱きしめる腕をますます強めた。
トクントクン…と土方さんの鼓動が聞こえる。
「あの…っ」
私の言葉を無視して、土方さんは耳元に顔を寄せると…
「ほんと…わかんねぇ女」
そう囁いて…私を解放した。
な、なに……。
今の……。
色っぽくて切なげな声の余韻が覚めない。
顔を熱くしたまま…振り向くこともできずに立ち尽くしていると…
「明日の朝の一の隊の巡察から参加しろ。
一には俺から話しておく…」
土方さんの声が背中に聞こえて、襖が閉まる音がしたー…。
土方さん……
「……っ」
熱くなった頬を両手でパンパンと叩いて気合を入れる。
明日から巡察…頑張らなきゃ…