遥か~新選組桜華伝~
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──次の朝。
早起きして身支度を済ませた私は、玄関へ向かっていた。
ここが巡察に出る隊の集合場所だったはずなんだけど…。
「誰も来てない…」
人気のない玄関にポツンと一人。
早く着きすぎちゃったのかな…?
でもこの時代に時計なんてないしなぁ…。
仕方ないから外に出て、壁に寄りかかりながら待っていると…
「…随分早いんだな」
感心したような声が聞こえて顔を上げる…
と、そこには浅葱色の隊服をまとった斎藤さんの姿があった。
「お、おはようございます斎藤さん…!
今日からよろしくお願いします」
慌てて姿勢を正し、挨拶するけど…
「…あぁ」
斎藤さんは不愛想に短い返事をするだけだった。
「えっと…」
何を話していいかわからずうつむいてしまう。
斎藤さんは私に背中を向け、冬の空を見上げている。