遥か~新選組桜華伝~


「……」


隣にいるのに会話の一言もないまま、嫌な沈黙が流れていく。


き、気まずい…。


二人分の足元を見つめ立ち尽くしていると、玄関には巡察に参加する隊士達が集まって来た。


「斎藤隊長、おはようございます!」


「おはよう」


「隊長、今日の巡察終わったら稽古つけてもらえませんかっ?」


「今日もか?ずいぶんやる気があるんだな」


斎藤さんが驚いたように言うと、隊士の一人が前に出た。


「俺、隊長みたいに強くなりたいんです。
だからお願いします!」


「わかった。帰ってきたら教えてやる」


そう言って…斎藤さんは少し楽しそうな笑みを浮かべていて。


斎藤さん……。


あんな風に笑ったりするんだな。


「じゃあ隊士も集まったし、そろそろ行くか」


斎藤さんの声を合図に、隊士達が京都の町へ繰り出した。


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