忘 恋
女は、俺が横に座っても
俺に目もくれずに、黙々と食べていた。
俺は、可笑しくなって
「なぁ、そんなに、食ってると牛になるぞ。」
と、言うと。
「えっ、そこは、ブタじゃないの?」
と、言い返され
俺は、大笑いした。
要は、俺が笑いだしたから
びっくりしていた。
「お前、名前は?」
「あのさ、人に名前を尋ねるときは
自分から名乗りなさいよ。」
と、女は言った。
すると、要が
「君、すごいね、留衣にそんな口
きく子、始めてみた。」
「はぁ?なんで?
そんなの常識でしょ?
それに、この人有名人なの?
でも、私は知らないわ。」
と、言うから
今度は、要が大笑いした。
すると、その女は、
「あんたら、二人うるさい!
笑ってるなら、あっちに行って。」
「俺は、高野留衣だ。
会社につとめて、一年目だ。」
「あっそう、私は、天野雫 21才
大学3年よ。」
「俺は、下垣要ね。
留衣とタメ、宜しく。」
「私は、宜しくする気ないから。」
と、雫は言うと
近くにいる女に
「ねぇ、芹香。
私、帰るよ。
食べたし、もういいでしょう?」
と、言った。
すると、その女は、
「もぅ、いつも雫はそうなんだから。
まぁ、いいや。来てくれただけでも。」
と、言った。
「そう、良かった。
それでは、社会人一年目の
先輩方、さよなら。」
と、言って、立ち上がり
顔をあげたとき
俺は、雫の顔から目が離せなかった。
雫は、女性にしては長身で
ストレートの黒髪
目は、落ちるんじゃないかと
思うほど、大きくて、二重目
口元にエクボが、できて
可愛い顔をしていた。
あの会話をしていた人間とは、
思えない、容姿をしていた。