【短】アイツの秘密
「兄弟…?」


私は静かに息をのんだ。

目の前で頭を抱えながら、沈んでいく夕日を見ている奏多の顔はなんだかいつも以上に寂しげな顔、瞳をしていて……







なんでだろう…。






なんだか見ていることができなかった……。


そんな顔の奏多は見たくなかった。

今、奏多に近付いて

『そんな顔しないで』

そう言いたかった。

けど言えなかった。


彼女でもなんでもないのに……

なにこいつ、とか思われないか心配で心配で堪らなかった…。

怖くて口が動かなかった。


「あぁ……」

「兄弟だったから、性格が似てたの…か」…そう言おうと思ったけど、私をじっと見つめた奏多の顔が私の言葉を黙らせた。

「俺とアイツ…性格似てんじゃん?」

うん……。

「最近お前と仲良くなってきたと思ったら、アイツが絡んできて。お前がアイツに襲われて……」

“襲われて”

私はこの言葉に首を傾げた。

「私…襲われてないよ?」

キスされたり、押し倒されたりはしたけど……ね。

「キス…されただろ……」

「ん……まぁ…」

「………俺とあいつは似てるから、お前がどっちでもいいとか言って、アイツのほうに行っちゃうんじゃないかって…心配で心配で堪らなかった」

そんなこと言われると私期待しちゃうよ?

いいの?

私はあなたを好きでいいの?

「お前が……
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