ぎゅってしてもいいですか。
「んとねー、うち持ってないんだよね。詩星が持ってて」
「ふぅん……。あれ、てか月乃は?一緒にいたんじゃないの?」
永澤が汗をぬぐいながら不思議そうに聞く。
……ふっふっふっ。それはね。
「今、永澤のこと探しに行っちゃってたからいないの。
……ほら、どこにいるかわからなかったし……。校庭と校舎、2人で手分けして」
「……なんだ。いるのかと思った」
も、もしかして、詩星のこと……気にしてるっ?!
これは脈アリかな?!♡
期待を込めた目で「なんで?」と言うと、
「最後に財布使った2―Aの屋台に行ったら、天野がお前と月乃に渡したって言ってたから」
いやそっちこそなんで?って感じの顔。天野って自称エンジェルの、うちの友達……。
……そんな理由かいっ!
───や、でも、それだけじゃない……みたい?
下うつむいて、なんか残念そう。
それは月乃がいないからなのか、うちが財布を持ってないからなのかは分からないけど……。
……詩星。これは期待してもいいかもよ?
「まあそんなわけで、とりあえず財布持ってんの詩星だから。校舎の中にいると思うよ!」
「おう。分かった。ありがとな」
一言残して、背を向け、校舎へと走っていく。
そんな永澤を、笑顔で顔がゆるみまくりながら見送った。