ぎゅってしてもいいですか。





一人の男が、私の顔に手を伸ばす。


それを拒み、後ろへ一歩下がると、もうひとりの男に腕をつかまれた。



「触んないで……っ!」



力なくそれを振り払うけど、そんなの意味ない。


「ほら……っ、大人しくしろよ」


今度は腰をつかまれ、手を拘束されて。

低く響く怖い声ですごまれる。




……これが、男の人と女の人の力の差。


そう思うと、身体の震えが増した。



このあとのことを想像するだけで、今にも泣きそうになる。




────こわい。すごくこわいよ。






……いやだ。誰か助けて……。





ひとけがない階段。下は騒がしいから、きっと聞こえない。



────私の声は届かない……。



男達に周りを囲まれ、手を強引に引かれる。




抵抗できないまま4階に連れられて。




「ここに入れ」




気持ちの悪い笑顔と冷たい声で、男の人が指さしたのは男子トイレだった。








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