ぎゅってしてもいいですか。
「……っと。こんなことして安心してる場合じゃない」
すると、ふと我に返り私を放し、にかっと笑った。
「逃げるぞ!」
イタズラっぽくそう言うと、すくっと立ち上がり駆け出して。
「ちょっ……えぇっ?!」
手をグイッと永澤くんに引っ張られる。
立って呆然としている男達に、永澤くん、突進。
うおっと叫びながらとびのけたところを狙い、間をすり抜けた。
男子トイレを脱出し、そのまま廊下を全力疾走。
「待てやゴラア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!!」
「へへっ、やだ」
「きゃあああああああっ!!!!!!」
こだまする不良達の声に背を向け、人でにぎわう3階へかけ降りる。
怖かったけど、いつの間にか震えは止まっていた。
……なんでだろう。さっきまで、あんなに……。
きっと……永澤くんが私の手を握っていてくれてるからだ。
こんな状況にも関わらず、私の心臓はトクントクンと音を立てて。
どうしちゃったんだろうか、ほんと。
嬉しいなんて……どうかしてる。