ぎゅってしてもいいですか。
「……ごめん、月乃。そんなカッコじゃダメだから、ジャージとってくる」
優しく月乃の肩をつかむ。
「え……ぐ……っ。行っちゃうの……?」
月乃は子犬のように目をうるませ、じっと見つめてくる。
ホント、その顔にやられそーだ。
……けど、今はダメ。月乃のためだから。
「すぐ戻るから……待ってて?」
「うぅ……」
不満気に口をちょっとふくらませる。
それがどこか子供っぽくて、ずっとここにいるよって言ってしまいそうだった。
もう全部、そんなとこも含めて……好きだとつくづく感じる。
だが、そんな自分を奮い立たせ、ゆっくり身体を離す。
ごめん、すぐ戻るから。
俺はそう誓うと階段をかけ降りた。
「あと……────好きだよ」
誰にも聞こえないように、そっと呟いた。