ぎゅってしてもいいですか。
待てよと言っても、一向に立ち止まってくれない。
俺だって……言いたいことがあるのに。
背を向けて逃げる月乃は、ホントに必死だ。
多分このままだと、この先ずっと避けられるだろう。
「月乃、待って!」
今すぐ伝えるために、すぐさま言葉を続ける。
「────明日。明日ちゃんと返事するから!」
いつの間にかそんなことを口走っていて。
月乃は真っ赤な顔でくるっとふりむくと、「うん……っ」とうなずく。
そして、あっという間にいなくなってしまった。