ぎゅってしてもいいですか。




「俺……もう初めてだらけで……。こんなに好きになったの、初めてだから……。

今まで付き合った子、それなりにいるけど……不安になるのは月乃だけで……っ」




わぁ、顔真っ赤っか。


私って、こんなに……想われてたの?




「いつフラれるか分かんないって、そんな状態。……だから、すっげー嬉しかった」




低く、優しい声でそういうと、照れくさそうにへへっと歯を見せて。




「……あんず、先輩、は……?」




……今までで一番聞きたかったこと。



────永澤くんは答えてくれる?





「ああ、あんず先輩は……。ずっと前から家が近所の幼なじみで、

俺の兄貴のことが好きだったんだけど……ひどいフラれ方して、

すっげー泣いちゃって、放っておけなくて……。だから、俺が代わりに付き合った。

……まぁ、兄貴の罪滅ぼしもあったけど……幼なじみとして大切だったから。……泣かせたくなかった」




ふっと悲しそうに笑う。







……そーだったんだ。


あんなに仲良かったのは、幼なじみってこともあるからだったのか。






────永澤くんは優しい。



ただ優しすぎて、自分まで相手の辛さを背負い込んじゃうんだね。





「だから一緒にいたんだけど……。俺があんず先輩はもう1人で大丈夫って思ったから、離れた。

……ずっとこのままの中途半端な関係は、ダメだとおもったから。最後のデートで……振った」





────それってもしかして、ずっと前の、あの……?


土曜日にデートしたっていう時に……?



それ以降あんず先輩が切なくて悲しそうだったのは、振られたからだったんだ。







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