ぎゅってしてもいいですか。
「……あれ、なんでこんなとこで泣いてるの?」
大人っぽい眼差しで、知らない男の人が顔をのぞき込んできた。
シャープな顎のラインと、優しげな目つき。
寝癖がヒドいみたいな無造作ヘアで金色の髪の毛。
スラッとした長身。
……そう、誰から見てもイケメン。
────てかこの人、どっかで……。
「彼氏に振られちゃった?」
ふふんと余裕の表情。
多分私よりもちょっと上……くらいかな。
てゆか別にいいじゃない、そんなことっ。
今は話しかけないでよ……っ!
ぽろぽろ止まらない涙のままキッと睨む。
「……いや、なんでもないです。あなたこそ」
ムスッとしながらつっけんどんに言った。
すると、彼は馬鹿にした口調で「俺〜?」と笑って。
何、この人。腹立つ。
人が泣いてんのにっ。
構わないで欲しいんだけどっ。