ぎゅってしてもいいですか。
顔を背け、奏人さんの元へ走ろうとする。
────が、永澤くんに手首をつかまれた。
「……っによ!離して……っ!!……ひっ……く」
ねじっても、引っ張っても、全然びくともしない。
そんな力、どこから出てくるんだろうか。
身長の低い永澤くんからは想像がつかない。
……男の子、なんだ……。
「……行かないで」
うつむきながら小さくつぶやいて、私の顔をじっと見た。
その目はなんだか悲しそうで。
抵抗していたことも忘れて、永澤くんに見入ってしまう。
「……ぜんぶ話すから……。アイツんとこだけは行かないで」
必死に訴えかけるような表情で、断れなかった。