ぎゅってしてもいいですか。
慌てて永澤くんから「ひゃ、ひゃあっ!」とか変な声を出しながら飛び退いて。
「嘘だよ、ごめんって。月乃のペースに合わせる。安心して?」
大人っぽい表情で見つめられる。
……その目が、とても色っぽくて。
「……でも」
────『でも』?
不意にうつむいた永澤くんが小さく言う。
「……ぎゅーって……抱きしめてもいいですか」
またちょっと顔を赤くしながらも、真剣な目で。
────私、気づいちゃった。
私だけが気づいた、永澤くんの秘密。
照れると敬語になるところ。
きっと、自分でも気付いてないと思う。
……ふふ、可愛いなぁ。
「はい、喜んで」
ゴンドラは頂上から下へ降りてく。
とびきりの笑顔でそう言った。