ぎゅってしてもいいですか。





慌てて永澤くんから「ひゃ、ひゃあっ!」とか変な声を出しながら飛び退いて。




「嘘だよ、ごめんって。月乃のペースに合わせる。安心して?」



大人っぽい表情で見つめられる。

……その目が、とても色っぽくて。





「……でも」





────『でも』?


不意にうつむいた永澤くんが小さく言う。




「……ぎゅーって……抱きしめてもいいですか」



またちょっと顔を赤くしながらも、真剣な目で。




────私、気づいちゃった。


私だけが気づいた、永澤くんの秘密。





照れると敬語になるところ。





きっと、自分でも気付いてないと思う。


……ふふ、可愛いなぁ。







「はい、喜んで」





ゴンドラは頂上から下へ降りてく。





とびきりの笑顔でそう言った。












< 264 / 421 >

この作品をシェア

pagetop