ぎゅってしてもいいですか。
>>2 理科室で
────キーンコーンカーンコーン……────
授業開始のチャイム。
はあ……ほんと、席が遠いなぁ。
ま、今は十分かなぁって思うけど。でも、この距離が心の距離なのかなと思わせるほど遠い。
「……ここはマグネシウムと酸素の化合量を求めて……、はい、教科書53ページ」
先生の声が理科室に響いた。
ぱらぱらと個々に教科書をひらく音が続く。
私も……っと。
「……?」
ふいに永澤くんの方へと目が行った。
なんだか……自分の机に向かってニヤニヤしてる。
あ、隣の女の子も笑って……。もしかして、落書き?机に落書きしてるの?
み、見たい……。
ずるいよ、隣の女の子。
永澤くんの落書き&あんな可愛い笑顔が近くで見れて。
私もあんなふうになりたいとか、思わないわけないじゃん……。
もう、全然十分じゃないよ。もっと近くなりたい。近くに行きたい。
私だって、私だって……。
そんな思いが通じたのか、ふと永澤くんと目が合った。
う、うう、うううわあああああああああぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!!!!!!!!!
心の中で叫びながら、慌てて目をそらす。
やっぱ無理、近づきたいとか言ってごめんなさい。嘘です。すみません神様。
……はぁ、こんなんだからダメなのかなぁ……。
「永澤っ!」
唐突に先生の声が耳をつんざいた。
「何書いてんだっ。真面目に授業受けろっ」
まわりからクスクスと声が漏れる。
そんな中、当の永澤くんはいたずらっぽく笑っていて。
隣の女の子も笑ってる。
みんなを少しのことで笑顔にしてしまう(?)永澤くん。
……かわいいよ、もう。
そんな風に笑わないで。
心臓がきゅんってうるさいから。