ぎゅってしてもいいですか。
目の前の鏡を、恐る恐る薄目を開けてみてみると……。
「うわぁ……なにこれ。かわいい……」
思わず感嘆の声。
だってそれくらい女心をくすぐるものだったんだもん。
髪は下ろしてるんだけど、横は三つ編みで、右左両方からのびてて。
その二つの三つ編みを一つにして、大人なワインレッドのリボンで結んである。
んでもって、下ろしてる髪の毛は、ゆるーくウェーブ。
それがまた、とんでもなく可愛い。
まぁつまり、女の子の憧れ。
「これが美容師マジックです」
ふふんと得意げな顔。当然視線はガッツリ遥輝先輩を捉えて……。
当の遥輝先輩はそんなこと気にもせず、私に歩み寄ってきた。
肩にポンと手を置くと、顔を近づけ、鏡を通して目が合う。
「……可愛いよ」
ふふっと優しく笑った。
────な、な、なにそれ……っ。
ふと視線を感じて、鏡を見ると、遥輝先輩越しにジト目で睨む美容師さんがいて。
その目はまるで般若。
わー、こわいっ!
この人、やっぱり遥輝先輩狙ってる?
遥輝先輩ならいくらでもあげますって!
女の怖さをまたひとつ知った私は、あわててそそくさと店を出ていった。
当然お支払いは遥輝先輩。
先輩に払わせるなんてちょっと心が痛かったけど、これも早く帰りたいと思わせる一つの手段。
許してくださいっ。