ぎゅってしてもいいですか。
なにこれ。抑えらんない。
初めての感覚で────支配の仕方も分からない。
とにかく今は、おかしくなりそうだ。
そんな馬鹿な俺は、ダッと月乃の元へ走り出した。
向こうからやってくる。
人ごみをかき分け、 唖然とする月乃と遥輝先輩の前に立ちふさがって。
「……な、永澤……くん……?!」
目を見張るだけの月乃。
……手、繋いでんじゃねーよ。
早く離せよ────。
「なにしてんだよ……。浮気……?俺に飽きちゃったの……?」
思ったより切ない声が出てしまった。
そんだけ……ダメージくらったってことだ。
────とにかく今は、俺の言葉の返事を聞きたくない。
振られんのが嫌だからなのか、これ以上喋っているとおかしくなりそうだからなのか。
それはどっちかわからないけど、もうここにいたくない。
あっけに取られてつっ立ってる遥輝先輩を目の端で睨むと、背を向けて走り出す。
「永澤くんっ……!!!」
涙声の月乃の声。
だけど、振り向かない。
だって月乃は、もうそいつのもんなんだろ?
こんな風にいじけるとか子供みたいだけどさ、俺どーしたらいーか分かんねーんだよ。
────ごめんな。
俺は出口を目指し、走った。