ぎゅってしてもいいですか。





「あのデートは好きだからとか浮気とかじゃなくてっ、複雑な事情が……」




走ってきたからか、息が途切れ途切れでうまく言えない。




「……ない……?」




ポツリとつぶやく永澤くんに、「え?」と聞き返す。




「俺じゃ、物足りない────?」




目を見ると、寂しそうに、そして切なげに揺れていて。


……何も言えなかった。




「俺、今の状態で付き合ってるの……無理。一旦……距離置いていい……?

気持ちの整理とか……つかなくて。ごめん……」




────『今の状態で付き合ってるの……無理』。


その言葉だけが頭の中で繰り返した。






そんな……いやだよ。



離れるってこと……?永澤くんと……?





────いやだよ……。








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