ぎゅってしてもいいですか。







「……そーなんだ」



南緒がため息とともに小さく漏らした。



日があっという間に落ちた寒い冬。


時計を見ると、もう午後6時。


前、永澤くんを好きでいるか一緒に悩んだ、あの喫茶店に来ていた。



南緒には、今日屋上階段であったこと、全部話したんだ。


綺麗な目をゆっくり伏せ、メロンソーダを飲む。



南緒はホント、絵になるくらい綺麗。


ショートカットの美人さん。



私もこれくらい綺麗だったら、自分に自信、持てたのかな────。



なんてひねくれて。





「うちは、詩星と永澤……相手のこと思いやりすぎて、すれ違ってる気がするんだけど……」



アーモンド型の大きな目でじっと見つめられる。


その目を避けるように、そっぽを向いた。




「違う……私が未練がましく永澤くんにしがみついてるだけ」




窓ガラスに映る自分が、濁って見える。









< 377 / 421 >

この作品をシェア

pagetop