ぎゅってしてもいいですか。
「……そーなんだ」
南緒がため息とともに小さく漏らした。
日があっという間に落ちた寒い冬。
時計を見ると、もう午後6時。
前、永澤くんを好きでいるか一緒に悩んだ、あの喫茶店に来ていた。
南緒には、今日屋上階段であったこと、全部話したんだ。
綺麗な目をゆっくり伏せ、メロンソーダを飲む。
南緒はホント、絵になるくらい綺麗。
ショートカットの美人さん。
私もこれくらい綺麗だったら、自分に自信、持てたのかな────。
なんてひねくれて。
「うちは、詩星と永澤……相手のこと思いやりすぎて、すれ違ってる気がするんだけど……」
アーモンド型の大きな目でじっと見つめられる。
その目を避けるように、そっぽを向いた。
「違う……私が未練がましく永澤くんにしがみついてるだけ」
窓ガラスに映る自分が、濁って見える。