ぎゅってしてもいいですか。
「どーかな。もう一回……話してみなよ」
南緒はまだ食い下がらない。
……はぁ?
……なに、南緒は幸せだからって。
西荻太貴くんと……上手くいってるんでしょ?
汚く醜い私が出る。
「無責任なこと言わないで……」
「……え?」
「無責任なこと言わないでって言ってるのっ!」
思ったより、大きな声が出た。
「もう一回話して……また、あんな風に傷ついたら……って思うと怖いの……っ!
そしたら私、自分のこともっと嫌いになる……っ」
南緒には分かんないよ。私の気持ちなんて。
「……詩星」
低く、ゆっくりとした口調。
優しくなだめるようなその声に、うつむいていた顔を上げた。