ぎゅってしてもいいですか。
「……だからさぁ、オレと付き合って?ね?」
不意に廊下で、アイツ……いや、同じ部活の遥輝先輩の声が聴こえてきた。
「……っ、だから……無理ですって」
それに続いて、月乃の嫌そうな声。
迫ってくる遥輝先輩を手で押し返す。
ナイス、月乃。
「わぁー!!いーなぁ、詩星羨ましい〜♡」
「めっちゃイケメンじゃーん!誰この人ぉー!」
遥輝先輩がジリジリと月乃に詰め寄り、
周りの女子たちがきゃーきゃーと騒いだ。
いや、よくねーよ。
二人と二人を取り巻くその光景に、目を奪われる。
ちょ、おい、近い。近いって。距離が。
────ふざけんな。
なんで俺のいない間に、月乃に言い寄ってんだ。