ぎゅってしてもいいですか。
「……そんな顔してる詩星を見るなんて、辛いだけだよ……」
ちょっとだけ顔を上げた南緒の目には、涙がたくさんたまってる。
……南緒……。
……ごめん。今だけ。今だけだから。
「今はまだ……辛いから。時間が経って……しばらくしたら、ちゃんと忘れるよ……」
……好きだった。ほんとに。
けど、付き合ってるんだもん。その思いは叶わない。
最初から気づいてたけど。
度重なる永澤くんとの時間に、ちょっと期待しちゃってたんだ。
……だからだよ。勝手な私の、うぬぼれ。
いつかちゃんとまた、作り笑いじゃなくて、心の底から笑ってみせるから。
「……うちにはなんも言う権利ないけどっ……詩星がそんな悩んでるのなんて辛い……。
うちだって、責任感じてる……。詩星に永澤が付き合ってるってホントのこと、
言わなけりゃ良かったって……。
うちがなにも教えなければ、詩星は笑ってたんじゃないかって、幸せなままだったんじゃないかっ
て……。ごめん、ホントにごめん……」
涙をポロポロ流しながらまくし立てる南緒に、私は何も言えなかった。
「……だから、ちゃんと話して欲しいの。詩星の想いとか、全部。うちが……うちがなくしちゃったから。
今度はちゃんと、いまの詩星を受け止めたいの……。聞いてあげたいの……」
「……南緒は……なにも悪くないよ……」
いつの間にか、涙が止まらなくなっていた。