ぎゅってしてもいいですか。
「……そんなわけないじゃん」
永澤くんは余裕たっぷりに言うと、私との距離を詰めてくる。
な、なに?!もしかして、永澤くんのS、発動させちゃいました?!
「ごっ、ごめんなさい!!許してっ」
「なにを?」
謝る私に構いもせず、どんどんこっちに来てて。
「おっ、お願いだから、これ以上近づかないで……っ」
そんな必死の言葉が通じたのか、永澤くんは足をピタッと止めた。
「……ぅあ、あの……っ」
「……んだ」
「……え?」
うつむいてつぶやくその言葉が聞き取れなくて、思わず聞き返す。
「……やっぱ俺、嫌われてんだ」
切なげにそんなことを言う永澤くんは、ちょっとしゅんとした表情をしていて。
くるっと方向転換すると、ドアの方に歩いていってしまった。
…………え、ちょ。
待って。そんなつもりじゃ。
待ってよ、永澤くん……。
行かないで……。
こんなことを思ってしまう私は、最低かな。
忘れるっていったのに。
────結局この関係を壊したくないのは自分自身で。
ズルいなぁ、私……。
「永澤くんっ!待ってっ!」
いつの間にか、そんな大声を出していた。