ぎゅってしてもいいですか。
「ホント……聞きたいことが多すぎて困るんだけど……」
呆れたようにため息をつく。
頬杖してる……。永澤くんのよくやるクセ。
それを目の前で見れるなんて……幸せかも。
「まずさ……なんでここにいたの?」
「着替えるためだよ?」
そんなの、そうに決まってるじゃん。
私が答えると、永澤くんは悩ましげに表情を曇らせた。
「いや……ここで着替えること自体無防備すぎるからね?俺だったからいいものの、
他のやつが来たらどーするつもりだったの?」
「当然、カーテンにくるまる!」
「なんだそれ……あんなとんがりコーンみたいなので……バレないとでも思う?」
とんがりコーンって……。
自信満々で答えたのに、そんなふうに言われたら……。悲しいなぁ……。
「あと……なんでそんなカッコしてんの?」
「……いや、これはイベントのファッションショーで……私出るから……。
あんず先輩が作ってくれたの……」
しゅんとしてうつむくと、永澤くんがはっとしたように動きを止めて。
「あんず先輩か……」
……あ、反応した……。なんか辛い……。
言わなきゃ良かったよ……。
「そんなんで出るの?そのカッコで?」
「も、もしかして、へ、へへ変っ?!」
変って言われたら……私もう耐えられないよぉっ……。
「んなこと言ってねー。……はぁ。あのさぁ……月乃」
永澤くん特有の低音甘ボイス。
耳を優しくくすぐって。
心臓はまたうるさくなりだした。
「月乃……もっと男ってゆーの……警戒した方がいいと思うよ?」
さっきまでの真っ赤な顔とは打って変わって、余裕の大人っぽい表情に。
「け、警戒……?しっ、してるよ!」
「絶対してない。……ばーか。俺になんかされたいの?」
なんかっ……?!
そんなこと……っ。
「……永澤くんは……しないでしょ?」
だってあんず先輩っていう好きな人いるわけだし。
そしたら、ニヤッと怪しい笑みを浮かべて。
「どーかな……。分かんないよ……?」
そう言って私に顔を近づけた。