ぎゅってしてもいいですか。
「好きなんでしょ?……だったら別に、好きでいたっていいじゃん。
思い伝わんなくたって、好きでいるのは自由じゃん。なんで無理矢理忘れようとするの?」
「……え……」
真剣な永澤くんに返す言葉が見つからない。
「諦めるなんて、もう好きでいることを自分からやめてるのと同じじゃん。
まだ相手に勝ち目があるかもしれないのに、そうやって自分から逃げてるだけじゃん。
自ら好きな人を忘れようとするなんて諦めることと同じじゃないの?」
……────そっか……。
私ってば、何やってんだろ。
そーだよ。好きなんだから……たとえ永澤くんに付き合ってる人がいようと、好きでいればよかったんだ。
無理矢理忘れようとするから……辛いだけだったんだ。
てゆーか、なんで忘れようとしてたんだろ。
よく考えると分かんなくなって、不思議な気分。
悩んでた問題の答えがあまりにも簡単すぎて、なんだか呆然としちゃうな。
そう思うと、肩の力がすぅっと抜けた気がして。
気がついたら涙が止まらなくなっていた。
……変なの。
好きな人に好きな人のこと諦めるなって言われてるなんて。
「ふふっ……」
「どーして笑ってんの?」
オロオロして困ったようにたずねる永澤くんも、おかしくてたまらない。
「ううん、なんでも。……ありがと!」
「ど、どーいたしまして……?」
あっけに取られる永澤くんを教室に残し、私は係の教室に走って戻っていった。