ぎゅってしてもいいですか。
「永澤くんっ!待ってっ!」
ドアに手をかけた瞬間、月乃が大声で呼び止めた。
「……ん?」
余裕ないなんて思われたくないから、ぴたっと止まって、あの子の方を向く。
赤い顔でカーテンごしにもじもじしているのが伝わる。
「あ、あの違くて……そーじゃなくて……」
次は何?誤解っていうことにしたウソで言い訳しようとしてんの?
嫌いなら嫌いでいいよ。
これ以上みじめな姿、晒せないで。
「なに?」
わざと少しぶっきらぼうに答えた。
すると月乃は、意を決したような顔をし、カーテンの中から飛び出て。
……その格好は、驚きなんて言葉じゃ済まされないようなものだった。
「こ、こんなカッコ、見せられないって……思った、から……
嫌いって思ったんじゃ、ない、から……」
短いスカートの裾を握り、照れながら一生懸命弁解しようとする月乃のカッコは、メイド服。
「……ッ?!」
思わず言葉を失う。