ぎゅってしてもいいですか。
>>19 心臓の音の意味
────今まで、こんな辛いことがあっただろうか。
「あーっと……この背中のをしめればいいわけ?」
「うん!そーそー。お願いしますっ」
戸惑う俺に、とびきりの笑顔で答える。
放課後の教室で、頼まれたことをこなしながら、月乃のへんな成長を感じていた。
……月乃の意地悪な部分が出てきたか?
椅子に座って女の子の背中のチャックしめるとか……拷問?
肌はおろか、下着まで見えてるし。気づいてんのかな?
あーもー。見てらんない。
無防備すぎる。
「んっ……」
心臓がはねた。
突然色っぽい声を出したと思ったら、俺の指が月乃の背中に触れていて。
「わ、悪ィ」
とっさに謝る。
「ううん、ごめん、大丈夫。くすぐったくて。……へへ」
「そ、そか、気をつける」
それにしても、少し触れただけであんな色っぽい声が出るものなのか?
慎重になりすぎて、心臓がバクバクして、おかしくなりそう。
「……うん、ありが……ひゃあっ!」
「ごごごめんっ!」
うあ、噛んだ……。
でもそんなこんなでやっとチャックがしまり、一安心。
よかったぁ……。