ぎゅってしてもいいですか。
ひと段落つき、ほっとしながらも椅子に腰を下ろす。
「……てかさぁ」
ポツリとつぶやく俺に、身体をこっちに向ける月乃。
「ホント……聞きたいことが多すぎて困るんだけど……」
ふーっと息を吐きながら、頬杖をつく。
クセというのもあるが、もちろん、何故か少し赤い顔をごまかすためでもある。
月乃はちょこんと椅子に座りながら、首をかしげた。
「まずさ……なんでここにいたの?」
「着替えるためだよ?」
それ以外何があるの?とでも言うような表情で放つ。
……あのさぁ……、それがどーゆーことだか、分かってる?
「いや、ここで着替えること自体無防備すぎるからね?俺だったからいいものの、
他の奴が来たらどーするつもりだったの?」
ちょっとばかりキツイ言い方になったけど、これも月乃のため。
「当然、カーテンにくるまる!」
そんな俺の思いとは裏腹に、あまりにも簡単な答えがかえってきた。
…………はぁ。
ホント、馬鹿なの?
「なんだそれ……あんなとんがりコーンみたいなので……バレないとでも思う?」
そしたらしゅんとうなだれて。どうやらやっと反省したようで。
……てか、傷つけちゃったかな……?
心配をかき消すように質問を重ねる。
「あと……なんでそんなカッコしてんの?」
────そしたら更にしゅんとして。子犬みたいにうつむいた。
「……いや、これはイベントのファッションショーで……私出るから……。
あんず先輩が作ってくれたの……」
……────あんず先輩。
またしても月乃の口からその言葉がでるなんて、と思う。