ぎゅってしてもいいですか。
────────なんて。
そんなこと、できるはずねーじゃんか。
今の俺にわかることは、この心臓の甘く締め付けるような苦しさと、うるさい心臓の音だけ。
あんず先輩とは、また違った意味で出来ない。
この心臓の音の意味を、俺は分かりかけていた。
ゴチンッと、月乃に頭突き。
「キス……されると思った?」
月乃は痛がるわけでもなく、ただぼけっと俺の顔を見つめ、力なくこくんとうなずいて。
「しねーよ」
頭をクシャっとなでる。
……これは……。
いや、でも絶対違う。
絶対認めない。
……きっと俺は、この行為をすることに理由をつけたいだけなんだ。
月乃とキスをすること、それに。
だからなんだ。
その理由を言い訳にしたいだけだ。
────────けど、これは。
これは……、嫉妬だ。
分からせてやるなんて、言い訳に過ぎない。
男に対する恐怖心を与えて、自らほかの男に近づかせないようにしようとしてるだけなんだ。
だからあんな行動に出たんだ。