ぎゅってしてもいいですか。
















────────なんて。



そんなこと、できるはずねーじゃんか。



今の俺にわかることは、この心臓の甘く締め付けるような苦しさと、うるさい心臓の音だけ。

あんず先輩とは、また違った意味で出来ない。


この心臓の音の意味を、俺は分かりかけていた。






ゴチンッと、月乃に頭突き。



「キス……されると思った?」



月乃は痛がるわけでもなく、ただぼけっと俺の顔を見つめ、力なくこくんとうなずいて。



「しねーよ」



頭をクシャっとなでる。







……これは……。


いや、でも絶対違う。


絶対認めない。







……きっと俺は、この行為をすることに理由をつけたいだけなんだ。



月乃とキスをすること、それに。




だからなんだ。




その理由を言い訳にしたいだけだ。












────────けど、これは。


これは……、嫉妬だ。







分からせてやるなんて、言い訳に過ぎない。



男に対する恐怖心を与えて、自らほかの男に近づかせないようにしようとしてるだけなんだ。





だからあんな行動に出たんだ。




< 77 / 421 >

この作品をシェア

pagetop