ぎゅってしてもいいですか。
「分かればいいんだよっ。へへ、初めて男の子にお説教しちゃった」
明るくそう振る舞う。
「……けど」
ゆっくり目を伏せると、うすく開いて、諭すようにポツリと話した。
「彼女さん……大切にしてあげて……」
「……え」
まただ。また、あんず先輩のこと。
……ホントは……。本当のことは……。
「私の好きな人……付き合ってる人がいて……今頑張って忘れようとしてて……。
……片思いは辛いんだよ。だからこそ、大事にしてあげて……。
好きな人との両思いは、ものすごく幸せなことなんだから」
かすれた声で途切れ途切れ続ける。